2024年6月26日(水)・27日(木)スカイホール豊田(豊田市総合体育館)でフラワーデザインコンテストin愛知を開催いたしました。2024ジャパンカップの「展示競技」・「セミファイナル」・「ザ・ファイナル」の1位の作品をご紹介します。採点でポイントになった箇所や、繊細かつ大胆なフラワーデザインをお楽しみください。
2024ジャパンカップ
2024 JAPAN CUP
開催地
- 開催日:2024年6月26日(水)・27日(木)
- 展示競技/6月26日(水)
- 開催場所:スカイホール豊田(豊田市総合体育館) 〒471-0861 愛知県豊田市八幡町1-20
テーマ
- 2024ジャパンカップ全体:花の魅力を世界へ
- 展示競技:花の遊園地
- セミファイナル:記憶に残るブーケ
- ファイナル:面と線による空間の捉え方
ジャパンカップは「展示競技」・「セミファイナル」・「ザ・ファイナル」の3競技が行われ、総合得点が最も高かったフローリストが優勝となります。2024年ジャパンカップの優勝者は、花の店とがわ(大分県大分市)の戸川 力太氏です。
戸川 力太氏の作品
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<展示競技> -
<セミ・ファイナル> -
<ファイナル>
展示競技とは
ABOUT EXHIBITION COMPETITION
展示競技はデザイン性豊かでテーマに沿った、プリザーブドフラワーや造花などではなく生の植物を中心とした作品を、幅900mm × 奥行900mmで各フローリストが作成し、会場に持ち込まれました。2024年のテーマは「花の遊園地」で、遊園地を連想させる見ているだけで楽しそうな作品が多く展示されました。お花屋さんは、店頭で花束を販売するイメージが強いのではないでしょうか。しかし、イベントや商業施設に飾られている、花の装飾や大型の展示物を制作することもあります。

テーマにあった表現力がポイント

ここからは展示競技1位の特典で通過した、窓花(愛知県名古屋市中区)の平野 弘明氏の作品。テーマの「花の遊園地」をしっかり表現されています。たくさんの花を使ったオブジェは近代的な高層エレベーターを思わせるようでありながら、垂直に立っている大きな大木をイメージしているようにも見える美しいデザインです。作品の上方に向かうにしたがって新しい芽が生えているように見え、自然と共生している世界観が表現されているよう。花々であしらわれたエレベーターには人が乗車している様子も表現されています。さらにエレベーターに向かう人々、展望台から景色を楽しむ人も。遊園地には欠かせないお客さんも、作品に盛り込んだことで、伝えたいものを表現しやすくなる工夫がされています。パッと見ても届けたいもの・表現したいものが伝わる作品だと評価されました。
熱意のある丁寧な制作がポイント

この作品は、杉の表面の皮をはがして、貼りかえることで厚みを調節しています。市販の樹皮では分厚くなりすぎてしまうため、樹皮を別のものに張り替えているのです。
また作品の上方まで手を抜くことなく、たくさんの花を生けていることも手が込んでいます。作品を見ていると、熱意をもって丁寧に作品を制作していることが伝わってくるようです。丁寧に制作された作品は、すっきりとした潔さを感じられました。
セミファイナル競技とは
ABOUT THE SEMI-FINAL COMPETITION
セミファイナルは、テーマにあった花束をその場で25分間以内に作ります。テーマは当日会場で発表されるため、いかに早くデザインをイメージし、実際に形にするかがポイントになります。
2024年のテーマは「記憶に残るブーケ」で、結婚式で花嫁が持つウェディングブーケをイメージして制作されました。

落ち着いてデザインが考えられているのポイント

ここではセミファイナル競技で最も高い得点を獲得した、花の店とがわ(大分県大分市)の戸川 力太氏の作品。セミファイナルで使用できる花で用意されていたパンリードという、細長い竹ひごに似たドライ花材を特にうまく利用できています。このパンリードは、生け花などでは線の表現などに使われることが多い植物です。しかし、この作品はパンリードをメカニックと呼ばれる、花の位置を固定するための枠(仕組み)として使っています。
セミファイナルは、競技が始まるときに使用できる花の種類が発表されます。加えて制限時間もあるため焦ってしまうと、普段は使わないような花材の使い方をして、不自然なデザインになってしまうことも少なくなりません。しかし戸川 力太氏の作品は、パンリードの特性が生かしつつ、制作に時間がかかるメカニックを丁寧に作り込んでいます。
植物の特性を使った引き立て合っているのポイント

この作品は、使われている植物の特性がよく生かせています。花々が無理な配置にならず自然に美しい束ね方でありながら、それぞれの花を引き立て合っています。束ねる際に葉が入り込んでいないかなど、花束を作るときの基礎的なことは当たり前として、花束に直線的・曲線的・大きい・小さいなどそれぞれの植物の特徴を捉え、空間を構成していることが評価されました。ツタ植物のリキュウソウを絡めて曲線的に柔らかく、対比するようにカラーで直線的に…その植物が持つ植生を生かすようにパンリードで作ったメカニックに組み込まれています。
また、制作中に戸川氏は審査員や来場された方へ目線を送るシーンがありました。それは花束だけに集中するのではなく顔を上げて、そこにいる観客に向けて花束を作っているように感じられました。実際にお花屋さんで買い物をしているように、お客さん(相手)を意識して花束を制作するように見えたパフォーマンスも戸川氏のすごさの1つだったと思います。
ザ・ファイナル競技とは
ABOUT THE FINAL COMPETITION
ザ・ファイナルは、テーマにあったデパートなどのディスプレイに飾るような大型の作品をその場で60分間で作ります。テーマは当日会場で発表されるため、デザインを構成しどのように表現するかを素早く考え、行動できるかがポイントになります。2024年のテーマは「面と線による空間の捉え方」でした。

伝えたいことが分かることがポイント

ここからは、フローリスト花咲(静岡県田方郡函南町)の原 健吾氏の作品を解説します。テーマである「面と線による空間の捉え方」が分かりやすく表現されているところが評価されています。この作品は、何を面・線として表現しているかが、はっきりしています。そのため、植物のことを全く知らない人が見ても、フローリストのように植物に精通した人が見たとしても、テーマが伝わってきます。ただ華やかさを表現したデザインではなく、植物の配置や植物の使い方から、作者の意図が読み取れるため、面と線で作られる空間が楽しめる美しい作品です。
大きな葉も使う方向を変えれば面・線どちらも表現することができます。限られた時間の中でパニックにならずに植物の特性を生かして、作者が自分のコンセプトをはっきりと表現できているでしょう。
空間の作り方がポイント

花材と合わせて用意されていた資材の1つであるフェンスを斜めに2つ配置したことで、面も線も生かせるような空間を作れています。このフェンスの置き方によって奥行を作り出すことができるため、立体的な動きも表現しやすい舞台が作れているのです。
資材(フェンス)の置き方1つですが、空間・舞台の作り方から表現できる幅が異なるのです。作品を見るときは植物に目が行きがちですが、ベースとなる資材の配置に注目するのもおすすめです。