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SDGs
2022.07.04

学生のアイディアでサステナブルな新規事業を検討 早稲田大学グローバル科学知融合研究所との1年間にわたる共同研究の成果が発表されました。

JFTD花キューピットは2021年度、早稲田大学グローバル科学知融合研究所との共同研究プロジェクトを実施しました。プロジェクトでは、学生が考案した花キューピットの新規ビジネスアイディアの事業化に向けて各種の調査や研究、ディスカッションを1年間にわたって重ね、年度末に最終成果発表会を行いました。

はじまりはビジネスアイディアピッチコンテスト

本プロジェクトは、2020年度にJFTD花キューピットが、BEYOND 2020 NEXT FORUM実行委員会および早稲田大学グローバル科学知融合研究所と共催した「ビジネスアイディアピッチコンテスト」(後援:文部科学省・経済産業省・農林水産省、特別協賛:花キューピット株式会社)がきっかけで発足したものです。
「ビジネスアイディアピッチコンテスト」は、「花キューピット」の愛称で親しまれる生花通信配達取引事業、会員のための共同事業などを通して「手軽に身近に花を贈る」日本の花文化を創ることを目指してきたJFTD花キューピットの新たなビジネスアイディアを題材に、起業・新規事業創出を志す人材育成を目的として開催しました。開催時から優れたアイディアは実際にJFTD花キューピットで事業化することも視野に入れていました。
コンテスト終了後、予選を勝ち抜き本選に進出した11組の中から、サステナブルをテーマとして扱い、事業性が高いと思われるアイディアを発表した2チームについてプロジェクト化し、事業化に向けて1年間の活動を実施しました。

事業化に向けて1年間の共同研究

事業化に向け、2チームがそれぞれに詳しい調査や検証を行い、花キューピット関係者とそれぞれ6回のディスカッションを行いました。

≪キクのフラワーロスの解決案≫

1つ目のプロジェクトは『キクのフラワーロスの解決案』というテーマで、先進理工学研究科 先進理工学専攻 一貫制博士課程1年の三野流斗さん、先進理工学研究科 生命医科学専攻 修士課程1年の高木大輔さんから発表されたアイディアです。このアイディアはコンテストでもグランプリを受賞しました。
コンテストで発表されたアイディアは、日本の切り花で最も流通の多いキクをバイオエタノールとして再利用するというものでした。他の種類の花と比べて再利用の事例が見当たらないことに着目し、再利用によるSDGs達成への貢献と同時に花キューピットの新規ビジネスとして収益を得ることを目指す内容となっていました。一般家庭から花キューピット加盟店に鑑賞後のキクを持ち込んでもらい、集まったキクを提携先でバイオエタノールとして製造するアイディアです。

プロジェクト発足後はバイオエタノールの製造方法や設備についてなど、事業化に向けた具体的な調査や研究を行いました。また、不要なキクの回収やその運搬のオペレーションをどう実装するかといった課題が挙がったことから、キクの生産から小売までの流通の仕組みを調べ、どの時点で回収するのがよいかを検討するなど、様々な角度から精度を高めていきました。

≪Flower Compost 花から始まる循環型社会≫

もう1つのプロジェクトは、『Flower Compost 花から始まる循環型社会』というテーマで、商学部2年の川野孝誠さんと先進理工学部3年の遠藤竜仁さんのチームから発表されたアイディアです。
コンテストで発表されたのは、花キューピットの加盟店にコンポスターを設置し、地域の住民が不要となった植物を投入、出来上がった肥料は地域自治体へ販売し、街の植物を育てるために活用することで循環型社会を目指すという内容でした。

プロジェクト発足後、アイディアの実現性の検証のためコンポストを取り扱う企業、花の生産者への取材などを重ねました。また実際に早稲田大学本庄キャンパスで、コンポスターによる花の分解度合いを確認する実験を行いました。さらに、できあがった堆肥を何に活用するか、循環型社会に近づけるためにどんなワークフローが考えられるかなどのディスカッションも並行して進められました。

最終成果発表会

プロジェクトが発足して約1年、調査やディスカッションを重ね、最終研究成果発表会を2022年3月29日に早稲田大学リサーチイノベーションセンター(東京都新宿区)にて開催しました。

最終発表で『キクのフラワーロスの解決案』については『未活用バイオマス資源“菊”を活用した地域循環型エネルギー創出』とタイトルを変え、先進理工学研究科 先進理工学専攻 一貫制博士課程1年の三野流斗さんと先進理工学研究科 生命医科学専攻 修士課程1年の高木大輔さんから報告されました。

プロジェクト発足後に挙がった不要なキクの回収方法・コストの課題については、一般家庭からではなく流通過程で花の集荷場に集まったキク残渣を回収する方法に変更されました。また、調査を進めるうちに含水率が少ないキクはペレットの素材として適合性が高い可能性にも気づき、回収したキクからペレット燃料を製造し、花農家の暖房等に活用するアイディアも発表されました。

さらに長期的にはキク由来のバイオエタノールからバイオポリエチレンフィルムを生産し、これを花キューピット加盟店で花束等のラッピングに活用することでエネルギーを循環させることも提案されました。コンテスト当初から、より実践的で持続可能なビジネスモデルにブラッシュアップされた内容となりました。

『Flower Compost 花から始まる循環型社会』については、商学部2年の川野孝誠さんと先進理工学部3年の遠藤竜仁さんから分解実験の結果とともに最終成果が発表されました。当初は、花を回収して堆肥にし販売することで花を循環させるアイディアでしたが、ディスカッションを重ね、教育コンテンツにも活かすアイディアに発展したものとなりました。

また発表資料と併せて、学校教育で用いるためのテキストも作成、提出されました。今後の展開として幼稚園や小学校のほかに老人ホームなどでも活用への可能性についても発表されました。

「生ごみのほうが微生物が多く分解しやすいが、花のほうは適切な温度にしておくと腐敗臭も少なく子供たちでも扱いやすいので、小学校や幼稚園の花壇などで利用することで、教育的価値も得られると思う。収益化を最優先にしたアイディアではないが、花を花キューピット加盟店に持っていくと特典をもらえるなどして、リユース意識の啓蒙をしながら企業の認知拡大と来店促進につなげられるのでは」とのまとめとなりました。

研究発表会の様子は以下よりご覧ください。

また最終発表に用いられた研究資料は以下よりご覧ください。


『未活用バイオマス資源“菊”を活用した地域循環型エネルギー創出』
研究資料

『Flower Compost 花から始まる循環型社会』
研究資料
フラワーコンポストマニュアル

最終発表会を終えて

『未活用バイオマス資源“菊”を活用した地域循環型エネルギー創出』発案者の三野さんは代替タンパク質としてのコオロギの研究、高木さんはAIを使った材料開発の研究に従事しています。「自分の普段の研究とは直接的につながるテーマではありませんでしたが、大きな社会課題に対し研究をどう活かしていくかという姿勢において大変よい経験になりました」と振り返りました。

高木さんは「コンテストでグランプリを頂いたときは、すぐにでも事業化できるアイデアなのではと思いましたが(笑)、実際に企業の担当者の方々とのディスカッションを重ねる中で、技術的な課題や収益化など現実的な課題がどんどん見えてきました」と、三野さんも「研究者として、自分の研究が面白いことも大事ですが、それが社会にどう貢献できるのか、社会実装するためにはどうしたらいいのかという視点も必要なのだと改めて感じました」とコメントしました。

『Flower Compost 花から始まる循環型社会』発案者の遠藤さんは先進理工学学部 電気・情報生命工学科でバクテリアを通して生物多様性について研究、川野さんは商学部でビジネスモデルを研究するゼミに所属しています。今回のアイディアでは、川野さんがサーキュラーエコノミーの視点を盛り込むことを提案し、遠藤さんが分解実験の温度や水分量などを調べるなど、それぞれの得意分野も活かしていったそうです。プロジェクトを終えて「実際に企業の人とビジネスアイディアをブラッシュアップしていくということで、学生同士のプロジェクトとは違い、あいまいな企画書を持って行っても通用しないと実感しました」と振り返りました。
川野さんは「サーキュラーエコノミーを社会実装するのは容易ではないと実感でき、自分が将来的にやりたいことの中で、どうサーキュラーエコノミーを反映していくべきか解像度が上がりました」、遠藤さんは「今回はビジネスの視点を取り入れるという点が少し足りなかった。これを実際にどうビジネスにつなげるかまで、考えられるようになりたいです」と話しました。

プロジェクトを監修した早稲田大学教授・グローバル科学知融合研究所所長の朝日透教授は「学生のビジネスアイデアコンテストにおいて、企業が長期間、受賞アイディアのフォローアップにまで携わってくれるのはなかなかないこと。学生の皆さんにとっても非常に貴重な経験となったと思います。ぜひ起業や新規事業によらず、さまざまな場で活かしてほしい」と期待を寄せ、花キューピット株式会社の𠮷川代表取締役も「非常に楽しかった。『Flower Compost 花から始まる循環型社会』は花のリユースに加え、仮想現実が広まるなかで花を通して命を感じてもらうという意味でも意義のあるアイディア。『“菊”を活用した地域循環型エネルギー創出』は、現実的に多くの業界が石油のコスト問題に直面しており、非常にリアリティーのあるアイディア。このまま詰めていけば現実的な事業になるのではないかと思える」と話しました。

※所属・学年は2021年度時点